会社の従業員数が増えることによりそれぞれの業務内容を把握しづらくなってくると、ブラックボックス化や属人化が起こってしまうケースがあります。その状態で放置しておくことは会社としてはとても大きなリスクとなるため、早急に対処する必要があります。
この記事では、ブラックボックス化や属人化とはどのようなものなのかを解説しつつ、そのリスクや解決方法についても詳しく説明いたします。
業務改善の大きな障壁となるブラックボックス化や属人化
企業として業務改善に取り組む時には、まずは現状把握を行い、どこにどのような問題があるのかを洗い出す必要があります。その時に大きな障壁となるのはブラックボックス化されてしまった業務や属人化されてしまった業務です。
業務のブラックボックス化とは?
業務のブラックボックス化とは、その単語の意味からもイメージできると思いますが、まさに業務が黒い箱の中で行われているようなことであり「仕事のインプットとアウトプットははっきりしていたとしても、その2つをつなぐ作業=プロセスがどのように行われているのか分からない状態」を意味します。
ブラックボックス化という言葉自体は、プログラミングの分野では以前から使われてきた用語ですが、現在では分野を問わず、業務の内容が不明瞭で外側から内部の構造や原理を知ることが難しくなってしまっている状態に対して用いられることが多くなってきました。
業務の属人化とは?
業務の属人化とは、業務のブラックボックス化を起因として起こる結果の1つのことであり「特定の業務を担当することができるのが、特定の人だけになってしまっている状態」を指しています。
長い期間、担当者から他の従業員に技術やノウハウが引き継がれないと、その業務を遂行するのがその担当者だけになってしまい、結果的に担当することができるのが、特定の人だけになってしまう状態が属人化といいます。
この属人化は、開発作業や企画業務のように個人の能力が業務のスピードに左右されやすい職種で特に起こる傾向があります。
ブラックボックス化の予兆
業務のブラックボックス化はどの規模の企業でも起こってしまうことですが、企業が大きくなると、発生する可能性は高まる傾向があるので注意が必要です。
企業の規模が小さい時は、仕事を従業員ごとに分けるようなことはせず、全員で複数の仕事をこなしたり、分けていたとしてもこまめに全員でフォローし合いながら仕事を進めて行ったりすることがあります。たとえば、商品開発の仕事をみんなで担当したり、企画をする担当者が営業も担当するようなケースも珍しくありません。
組織の成長による分業化でブラックボックス化へ
しかし、小さかった企業も大きくなるにつれて、仕事のやり方に変化が現れてきます。
増えてきた業務を効率的にこなす必要があるため、業務内容に線を引き、専門性の高い従業員に特定の仕事を割り当てるようになります。特に企業が急成長して業務の量が著しく増えた場合、その対応策としては専門分野ごとの部署を作り、所属する従業員ごとに担当する業務を細かく分けるという策を講じることがよくあります。
この方法は従業員の専門性を高めることができ、担当する業務をスピーディに終わらせることができるようになるため、急な業務量増加への対象方法としては有効です。しかし、この方法は業務の属人化・ブラックボックス化を起こしてしまうというデメリットもあります。
ブラックボックス化や属人化の代表的な例
ブラックボックス化や属人化が起こる具体的な事例は多岐にわたります。以下に挙げる2つは代表的な例なので確認しておいてください。
【1】専門性の高まりが引き起こすケース
取り扱い商品のスペックが向上したり、他社と顧客の奪い合いが激しくなってくると、企業に求められるスキルや知識の専門性は高くなってきます。それに対応するためには、素早い対応が求められるため、従業員を育てている時間がないという場合もあります。
その結果、対応できる専門的な能力を持つ人に専門性の高い業務が集中してしまうようになり、ブラックボックス化が起こってしまうことになります。業務が自分に集中してしまうことに不満を感じるケースもありますが、ほかの社員にやり方を教えるよりも自分でこなしてしまったほうが効率的だと考えてしまうケースもあります。
概して、従業員が多い企業ほど業務が属人化していく傾向があるようです。
【2】現状維持の姿勢が原因となるケース
得意な業務あったり楽しいと感じる業務があったりすれば、その業務に集中したいと考える従業員もいます。高い評価を得ることや新たな業務によるストレスなどを考慮すると、苦労する可能性があって不慣れな業務にわざわざ手を出したくないと思うのは不思議なことではありません。
企業として新しい業務にチャレンジすることを推奨していたとしても、その思いが現場の従業員に伝わらないケースも見られます。また、自分の業務や立場を他の従業員に取られてしまうことを怖がり、専門的なスキルや知識を自分だけで独占しておきたいと考える人もいます。
上記のように現状を維持しようとする発想の従業員がいると、あらゆる部署でブラックボックス化や属人化が起こってしまうことになります。
危険性を把握しよう!ブラックボックス化のリスクとは?
ブラックボックス化のリスクは意外と大きなものです。ある場合には、大きなトラブルや事件にまで発展しまうことがあったり、会社の信用やブランドを大きく損なってしまったり、経営陣が謝罪会見をしないといけなくなってしまったケースもあります。
まず、ブラックボックス化の結果、どのような事態が起こりうるかを理解し、早期に解決することに取り組みましょう。具体的には以下のようなリスクがあるので要注意です。
【1】業務がストップし、継続できなくなるリスク
特定の業務を担当することが可能なのが特定の従業員だけとなってしまうと、その従業員が急病で休職してしまったり退職してしまったりしたときに大きな問題が起こることがあります。マニュアルなどが整備されておらず他の従業員が担当することができない場合は、その業務は完全にストップしてしまいます。
加えて、その該当の業務の影響によって他の業務にまで影響が出てしまうケースもあるでしょう。納期に間に合わなくなってしまうことで、顧客との取引が中止になってしまうことなどで、企業の売上や信用を失ってしまう恐れがあります。
【2】不正に発展するリスク
企業の不正が明らかになってしまったために謝罪会見が開かれるケースも珍しくありませんが、その原因が、ブラックボックス化してしまった特定の業務にあったというようなケースもあります。特に財務・経理部門の業務上の失敗(例えば資産運用の失敗)に関する隠蔽や、多額の横領など、ブラックボックス化された業務において、たった一人の不正によって会社全体が損害を被ってしまうというリスクがあります。
このリスクは、企業の存続自体を揺るがしてしまうような事態に発展することもありますので、特に金銭や重要情報を取り扱う部門の業務については要注意です。
【3】従業員同士で連携を取りづらくなるリスク
業務のブラックボックス化が進んでしまうと、自分の仕事に集中するだけでよくなるため、従業員同士による情報共有をする頻度が下がってしまいます。その結果、従業員同士のコミュニケーション不足が起こり、企業や部署全体で取り組まなければならない課題が生じたときにお互いの連携が取れないといった状況が起こってしまい、現場が混乱してしまうこともあります。
また、業務のブラックボックス化が進んでしまうと、何か改善が必要な点が見つかった場合であっても、自分が担当する範囲でないならば、積極的に提案したり相談したりすることがなくなってしまう、というリスクも含んでいます。
ブラックボックス化対策には図で示すことが効果的!
ブラックボックス化の対策として、図で示すことが効果的です!フローチャートで業務を可視化させます。
業務をフローチャート形式で可視化
業務のブラックボックス化の対策の一つとして、業務の可視化があります。つまり、「具体的にどのように業務を進めているのか」を本人以外の従業員も理解できる仕組みをつくることが有効となります。
具体的には、まず、フローチャートで業務の工程を図示します。フローチャートとは、プロセスの内容を記述する箱とそれをつなぐ矢印付きの線などで工程を図示するものです。分岐や繰り返しなどの行動表現が可能であり、プログラムのアルゴリズムなど、複数の工程で成り立つフローを視覚化することが可能となります。
業務というものは複数の工程に分かれていたり、遂行する順番が決まっていたりするのが一般的であるため、フローチャートとの相性はとても良いのです。業務の作業や状態をそれぞれの箱に記載して、それらを順番どおりに並べて線でつなぐことが作成の基本となります。
業務マニュアルもフローチャート形式がわかりやすい
もちろん、ブラックボックス化の対策としては、業務マニュアルを作成する、ということも有効な対策の一つです。しかし、マニュアルを作るだけではなく、まず、フローチャートを作成して全体像を明らかにしたほうが効果が高まります。
業務の流れが複雑な場合であっても、流れを図示することができると専門性がない従業員が理解することが容易になります。各業務のつながりが分かるフローチャートがあると、従業員同士の業務の共通点などが分かってくるので、無駄を省くことができたり協力することができたりするといった工夫も容易になります。
ブラックボックス化を解消するメリットや重要性は?
企業にとってブラックボックス化を無くすことには多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるのかを理解するとともに重要性を知ってください。
【1】他の従業員でも担当できる(ワークシェアリング)
業務に関するスキルや知識が共有されることで、他の従業員がその業務を担当することが可能になります。本来の担当者と同じレベルでこなせるようになるのが一番望ましいですが、そこまでのレベルに到達しなかったとしても十分なメリットがあります。
担当者が急病で休んでしまった場合でも、復帰するまである程度のレベルで対応することができるだけで、重大な損失を回避することができるからです。
【2】業務のノウハウを保持できる(ナレッジ資産の蓄積)
終身雇用が当たり前ではなくなってきたことで、従業員の入れ替わりが多くなってきました。業務が特定の従業員だけで対応している状態では、その従業員が辞めることに伴い業務のノウハウという企業の財産が失われてしまいます。
ブラックボックス化を無くしておくことで、業務のノウハウが他の従業員にも引き継がれるので、企業として業務のノウハウを蓄積することが可能となります。
【3】企業の信用を守りやすくなる(企業価値の向上)
ブラックボックス化されていないことで、他の従業員による業務の進捗確認や品質チェックが可能となります。それは、担当者が問題点に気付かなかった場合であっても、早期に業務改善を行うことができるようになります。たとえば、製造業であれば、不良品が生産され続けてしまうというようなことを避けることができます。
すなわち、ブラックボックス化を無くすことが企業の信用を守ることにもつながるので、その効果や重要性はとても高いといえます。
ブラックボックス化は見過ごさずに、リスクが大きくなる前に解決しよう!
業務のブラックボックス化や属人化は、事業が順調な時はあまり問題視されることはありません。しかし、この問題を解消しつつ事業を拡大していくことは大きなメリットが得られるため、順調な時こそブラックボックス化、属人化が起こらないように対策を検討し、対応することが大切です。
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