【Step2】BPMツールでできることを学ぶ

BPMツール(BPMS)の導入事例4選と、失敗しないために押さえるべきポイント

効率的なBPMの実施に欠かせないのが「BPMツール(BPMS)」です。ただし、導入にあたって、決して少なくない費用と期間を費やす必要があるため、失敗は許されません。

そこでこの記事では、BPMツールの導入成功事例を4つご紹介いたします。最後に、必ず押さえておくべきポイントも解説したので、ぜひ参考にしてください。

BPMツール(BPMS)とは

BPMツールは、「BPMS(BPM Software/Suite)」とも呼ばれ、企業の業務プロセスを分析・モニタリングできるツールのことです。

BPMツールの機能には、大きく分けて以下の3つがあります。

  • モデリング機能:業務プロセス図を描き、可視化できる機能
  • シミュレーション機能:業務プロセスが正常に実行されるかどうかを予測する機能
  • モニタリング機能:担当者の案件・タスクの進捗状況を確認できる機能

BPMツールを用いて上記3つのサイクルを回し、業務プロセスを改善し続けることで、徐々に業務を最適化していくことが可能です。

BPMツール(BPMS)の導入成功事例

ここでは、BPMSツールの導入で成功した事例を4つご紹介いたします。

MIC Risk Solutions株式会社:正確性の高い書類作成と、厳密なプロセス管理が可能に

MIC Risk Solutions株式会社は、グローバルに展開する日本企業へ向けて、保険アドバイザリー、保険ブローキング、リスクマネジメントといったサービスを提供する会社です。

同社は、世界中の保険会社の中から最適な商品を選定し、契約する必要があったことから、個別に発生する書類フォーマットや申請フローを管理しきれていないことが課題でした。諸々の管理は人手や紙で行っており、ひとたび契約上の不備が見つかれば、保険が適用されない事態が起こりかねなかったのです。

そこで同社は、「書類フォーマットを変更しながら運用できること」「不備が発生しないよう厳密に管理できること」を条件に、合致したBPMツールを導入。まずはスモールスタートで一部の業務から適用し、PDCAを回しながら徐々に範囲を拡張していきました。

結果、コンプライアンスの徹底に向けたシステムの土台作りに成功。また、各案件情報と見積書・請求書の作成業務がリンクし、自動化や効率化がより一層推進されました。

参考:AssistMicro「定められた業務プロセスが決して抜け落ちない仕組みを実現」

株式会社日立ICTビジネスサービス:90もの業務プロセスへBPMツールを実装

株式会社日立ICTビジネスサービスは、日立グループの各社へ向けて、ITセクターのBPO(Business Process Outsourcing)サービスを提供している会社です。同社は、日立グループ全体でDXや業務改革を進めている背景から、現状の改革に迫られていました。

そこで、外部のBPM研修を活用し、BPMNの記述方法や、経営層の説得方法、BPMSのプロトタイプ構築方法といったノウハウを習得。その後、社内業務の約2,500プロセスを洗い出し、BPMツールの導入を実施しました。

結果、90プロセスにおいてBPMツールの実装を実現。業務プロセスの可視化ができただけでなく、業務のボトルネックをグラフ化し、継続的に改善活動を行うことが可能になりました。同社はさらに、BPMツールとRPAの連携を実施。定型業務や標準化が可能な業務へRPAを適用し、BPMツールにてプロセスを把握することで、野良ロボットの排除に役立てています。

参考:intra-mart「株式会社日立ICTビジネスサービス様の導入事例」

株式会社沖電気カスタマアドテック:属人化の排除や業務のKPI策定が可能に

株式会社沖電気カスタマアドテックは、IT関連の保守や商品販売を行うOKIグループの会社です。

同社は、「次の10年のための作法を作り、そのためのシステムを用意する」の構想実現に向け、近年におけるビジネス環境の変化に対応すること、業務の属人化を排除することを目的にBPMツールを構築。市場や業務プロセスの変化へ柔軟に対応するために、基幹システムではなく、BPMツールへ業務アプリケーションを統合するアプローチを採用しました。

結果、業務の見える化やワークフロー化を実現。属人化を排除したり、業務のKPIを策定したりできるようになり、生産性が大幅に向上しました。

エイチアールワン株式会社:顧客ごとに発生する業務や進捗を可視化

エイチアールワン株式会社は、中小・大企業へBPOサービスを提供する人事サービス・コンサルティング会社です。

同社は、BPOサービスをより安価に提供するため、業務のセンター化を目指す一方、顧客ごとに業務範囲や人事制度が大きく異なる現状から、対応に苦慮していました。業務プロセスの管理については、基幹システムにて実施していましたが、データの大量処理に重きが置かれ、事務処理については一部を担うに過ぎないのが現状でした。

そこで、業務プロセスの現状把握とBPMツールの導入を実施。要件定義を行い、アジャイル開発の手法で約3ヶ月後に本格稼働へとこぎつけました。

結果、顧客ごとに発生する属人性を排除することに成功。処理手順をシステムでサポートしたり、各担当者の進捗状況を把握したりすることが可能になりました。同社は今後、適用範囲を広げて、さらなる標準化・センター化を目指すとしています。

参考:intra-mart「エイチアールワン株式会社様の導入事例」

BPMツール(BPMS)の導入でよくありがちな失敗例と、未然防止策

BPMツールのよくある失敗事例として、以下の点が上げられます。

  • 導入目的が明確になっていない
  • ベンダーやコンサルタントへ丸投げしてしまっている
  • 最初から広範囲に適用してしまっている

下記では、それぞれの詳細を解説いたします。

ツールの導入目的が明確になっていない

1つ目は、BPMツールの導入目的が明確になっていないことです。「とりあえずツールを導入しておけば、業務効率化や生産性向上がもたらされる」と担当者が思いこんでいるケースで、BPMツールに限らず、どのツールでも例外なくあります。

そもそも目的が明確になっていなければ、導入プロジェクトの方向性が見えないがために、社内やベンダーとの調整コストが増え、時間やコストをムダにしてしまいます。また、導入が終わった後でも、結局、形式的な使用にとどまったり、使用されなくなったりと、失敗に終わる可能性が高まるでしょう。

未然防止策

BPMツールの導入は「手段」であり「目的」ではありません。そのために、ツール導入前に以下の点を明確にしておく必要があります。

  • そもそも、自社でBPMを実施する目的は何なのか?
  • BPM実施に向け、本当にツールを導入する必要はあるのか?
  • BPMツールを導入することで、何をどう変えたいと思っているのか?

導入目的が明確になれば、RFP(提案依頼書)の内容が具体化し、ベンダーから現実的な提案を受けやすくなります。

ベンダーやコンサルタントへ丸投げしている

BPMツールの導入において、自社のリソースやノウハウが不足していることにより、コンサルタントへ現状分析や要件定義を任せたり、ベンダーへシステム開発のすべてを任せたりしているケースがあります。

そのような事情は仕方ないにしろ、自社の社員がまったく関わらずに丸投げすると、期待から大きく外れた状態で納品され、失敗に終わってしまう可能性が高まります。

未然防止策

コンサルタントやベンダーは、その分野での知見やノウハウは豊富に有していますが、自社における業務の実情については、それほど詳しくありません。そのため、BPMのコアメンバーや現場の担当者が積極的に関わっていくことが必要です。
「どの業務がボトルネックになっているのか」「現場視点ではどのような機能が必要なのか」など、自社が一番よく知っている情報を外部へ共有することでこそ、BPMツールの導入を理想に近づけられます。

もし社内体制が整っていないのであれば、プロジェクトの責任者やコアメンバー、現場の代表者を任命することから始めましょう。

最初から広範囲に適用してしまっている

3つ目は、BPMツールを最初から広範囲に適用してしまっている点です。最大限の標準化効果を得たいと思い、対象業務のシステム化を一括で実施したり、システム構築後に一気に広範囲へ適用したりするケースです。

まず、対象業務のシステム化を一括で実施した場合、稼働までの期間が長引くほか、コストが高くつきます。次に、システム構築後に広範囲で適用した場合は、システムや業務プロセスで課題が見つかった場合に、大きな手戻りや変更のコストが生じてしまう点が問題になります。

未然防止策

BPMツールの導入を成功させるには、スモールスタートが肝要です。まずは、負荷が低く効果の出やすい業務から取り組み、成功したら徐々にスコープを拡大していきます。

BPMはもともと、PDCAによる改善活動を前提としたものであることから、大きく計画して大きくはじめることには向いていません。「ウォーターフォール」ではなく「アジャイル」の視点を持ってBPMツールの導入を進めましょう。

導入事例を参考に、BPMツールの活用を検討してみよう

この記事では、BPMツールの導入成功事例と、失敗しないために押さえておきたいポイントをご紹介いたしました。重要なのは、以下の3つです。

  • ツールの導入目的を明確にする
  • 社内のメンバーが主体的にBPMプロジェクトへ関与する
  • スモールスタートで行う

注意点をしっかりと押さえれば、BPMツールの導入を成功へと導くことが可能です。ぜひこの記事を参考に、自社での導入を積極的に検討してみてください。

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