【Step1】BPMツールについて基礎知識を学ぶ

BPMとは?BPRとの違いや活用シーン、成功事例などを解説

BPMは、業務標準化や生産性向上が期待できる、注目のマネジメント手法です。特に最近は、RPAの再構築を目的に導入する企業が増えるなど、現場での活用が着々と進んでいます。

そこで本記事では、BPMの概要やBPRとの違い、企業における導入事例などを解説いたします。初めての方でも分かりやすいように記載したので、ぜひ参考にしてみてください。

BPMとは?

BPMとは、Business Process Managementの略で、業務プロセスにおけるボトルネックを見つけ出し、改善するための管理活動のことです。具体的には、業務プロセスの改革に向けて、メンバー間で既存の役割やルールを共有し、標準化・効率化に向けて継続的にPDCAサイクルを回していきます。

公益社団法人企業情報化協会(前身の日本ビジネスプロセス・マネジメント協会)によると、BPMを以下のように定義しています。

“BPMは、業務のプロセス(手順、役割分担、ルール)を、役割分担している関係者で共有することで、日々の業務の成果を向上させる経営手法です。

出典:公益社団法人企業情報化協会「BPMとは」

BPMとBPRの違い

BPMと似た言葉に、BPRがあります。結論から言うと、継続的な運用を前提としてPDCAサイクルを回していくのが「BPM」、一度切りの活動の意味合いで使われる傾向にあるのが「BPR」です。

BPRは、Business Process Re-engineeringの略で、組織における既存の業務プロセスを見直し、根本から再構築し直す活動のこと。1993年に発行した、マイケル・ハマー、ジェイムズ・チャンピー共著の『リエンジニアリング革命』にて提唱されたことを発端に、その理論が世界中に知れ渡るようになりました。

BPMとBPRは、どちらも「Business Process」の語句が含まれているように、ビジネスプロセスに関する活動である点は同じです。

一方で、BPMが「Management(管理)」、BPRが「Re-engineering(再設計)」とある点が大きな違いです。前者は「管理」とあるように、PDCAなど継続的な運用が前提となっているのに対し、後者は、継続的かどうかに関わらず「再設計」すること自体が目的となっていることが多いです。

BPMとBPRの違いや関係性をまとめると、以下の図式で表すことが可能です。

  BPM = BPR × PDCA

BPMにおけるPDCAサイクル

公益社団法人企業情報化協会が「BPMは、業務プロセスのPDCAサイクルを回して業務の成果を上げる」と述べているように、BPMの実施においてPDCAサイクルの活用が欠かせません。

以下では、BPMの実施内容について、PDCAサイクルのプロセスごとに詳しく解説いたします。

P(Plan):現状分析・プロセス設計

プロセス設計の段階では、現状の業務プロセスを把握・分析し、それに合わせた適切な改善施策を立案します。

現状分析は、国際標準の業務プロセス表記法「BPMN(Business Process Model & Notation)」を用いて行うのが一般的。BPMNは、「ビジネスモデリング表記法」とも言われ、業務プロセスのフローチャートを作成する際のルールを定めたものです。

BPMNは、主に、以下の記号を用いて表記します。

図形の名称記号内容
トリガー◯(丸)行動の起点
アクティビティ▢(丸四角形)行動内容
ゲートウェイ◇(ひし形)分岐条件
シーケンスフロー→(矢印)行動の実行順序

BPMNを使い業務プロセスを可視化し、ボトルネックを発見したら、それを改善するために業務プロセスを再設計していきます。

このときの施策内容として、作業手順の変更だけで済むケースから、RPAやERPなどのITツール導入が必要になる場合まで、企業によって採用する打ち手はさまざまです。

 D(Do):プロセスの共有・実行

業務プロセスの再設計とフローチャート図への落とし込みが終わったら、それを現場の関係者へ共有し、運用を開始していきます。

BPMを実施する際は、専用のBPMシステムを活用するのが一般的。管理者は、業務フローチャートの画面を各担当者へ共有し、それぞれが行うタスクを割り当てます。加えて、「現場が新しい業務プロセスをしっかりと理解しているか」「各人が行うタスクが漏れなく割り当てられているか」といった内容を確認し、業務が円滑に遂行されるようサポートします。

現場の担当者にとっては、今までとは違うやり方で業務を行うことになるため、手戻りが発生したり、スムーズに進まなかったりする可能性がある点も考慮しておくことが重要です。

C(Check):プロセス把握・分析

実際に業務が回りはじめたら、管理者がBPMシステムの画面から進捗状況を把握し、予定通りに進んでいるのかを確認します。そして、各担当者における業務の実績やタスクの消化状況、業務全体にかかっている時間などを把握し、以前の業務プロセスと比較した分析を行うのが主な流れです。

分析が一通り終わったら、成果が出ている箇所・出ていない箇所のほか、新たに見つかった問題などをまとめ、改善に向けたレポートを作成します。

A(Act):改善案の立案

最後に、分析結果をまとめ、業務プロセスのさらなる改善に向けた案を検討していきます。必要に応じて、KPIの設定や継続運用に向けたルールの策定、マニュアルや手順書の見直しなどを行います。

BPMが一過性の活動で終わらないようにするためには、専門のチームや責任者を据えて、PDCAを回すための体制づくりをすることが重要です。

PMの実施に役立つ「BPMシステム」とは?

上記の章でもご紹介したBPMシステム(BPMS:Business Process Management System)は、その名の通りBPM活動を管理できるシステムです。具体的には、業務プロセスの設計から改善まで、PDCAサイクルのすべての活動をサポートします。

例えば、以下のような機能を活用できます。

  • フローチャートの作成機能
  • 再設計プロセスのシミュレーション機能
  • タスクの割り振り・案件確認機能
  • ログ解析によるモニタリング機能
  • 基幹システムなど、外部システムとの連携機能

BPMシステムを活用することで、BPMの実施にかける準備や運用の手間を抑えて、より効率よく改善活動を進めることが可能です。

BPMの活用シーン

ここでは、BPMの活用シーンを「業務・サービス改善」「システムの再構築」の2つに分けて解説いたします。

業務・サービス改善

1つ目は、業務やサービスの改善活動です。

例えば、営業部門とマーケティング部門など、複数の部門が関わる業務においてプロセス改善を行う場合に有効です。BPMの仕組みがあれば、共通目標を持ったり同一の手順で進めたりできるため、チーム間の軋轢を最小限に抑えながら、合意形成をスムーズに行えます。

また、カスタマーサポート部門など、顧客と直接関わる部門や業務の改善活動にも向いています。BPMNにより顧客対応フローを明確にし、対応の迅速性や正確性が高まるような業務プロセスを、継続的に追求していけるからです。

システムの再構築

理想とする業務プロセスに合わせてシステムを再構築する際においても、BPMの活用が役立ちます。

例えば、ERPの刷新プロジェクトでBPMを活用すれば、既存システムで問題となっている業務を可視化・分析しやすくなります。加えて、改善活動を進める中で分かった、より効率的な業務プロセスに合わせてシステムの要求を定義できるようになるのです。

また、BPMはRPAとの相性がよいのも特徴。RPA単体の導入だと、業務効率化を目指す際に個人単位での改善にとどまるケースが多いのも実情です。そこでBPMの手法を組み合わせることで、チームや部署、部門などの業務プロセス全体からRPAの役割を定義し、組織とロボットがスムーズに協働していくための仕組みづくりを行えます。

BPMを実施するメリット

ここでは、BPMを実施するメリットを2つご紹介いたします。

オペレーションコストを削減できる

BPMを活用することで、業務のオペレーションにかけるコストを削減可能です。

例えば、今まで紙で行っていた申請業務をシステムに置き換えれば、紙の購入や保管・郵送などにかかる費用を抑えられます。また、プロセス改善によって顧客対応スピードが向上すれば、一人あたりで捌くことのできる件数が増え、採用費や人件費の抑制につながります。

「オペレーションへのコスト意識が薄い」「前にコスト削減をしたのにも関わらず、再び増加に転じている」といった課題を抱えているのであれば、継続的な改善を目指すBPMの活用がおすすめです。

ビジネス環境の変化へ柔軟に対応できるようになる

2つ目に、ビジネス環境の変化が生じても、組織として柔軟に対応できるようになるのがメリットです。

例えば、長年同じ業務のやり方のままで変わっていないと、いざ大きな変化が生じた際に、抵抗勢力が生まれたり現場に混乱が生じたりしてしまう可能性が高まります。一方で、BPMの実施により、各々が普段から業務改善の意識を持っていれば、いざ大きなプロセス変更が生じた際でも、受け入れられやすくなります。

近年は、AIやIoTなど、新たなテクノロジーを業務プロセスと融合させる機会が多くなってきています。BPMの実施により、普段から業務プロセスの変化に対する意識を高めておけば、データドリブンの組織文化をより素早く構築することが可能になるでしょう。

BPMの導入成功事例

以下では、BPMの導入成功事例を2つご紹介いたします。

日本生命保険相互会社:BPMS×RPA×AIのアプローチで業務効率化

日本生命保険相互会社は、個人を中心にサービスを提供する大手生命保険会社です。
同社は、事務作業に関して3つの課題を抱えており、それらの解決を模索していました。

1つ目は、ローカライズの問題。例えば、同じ事務作業を複数の部門で行っている場合に、マネージャーの点検方法の違いにより、各組織で独自のルールが作られていたのです。それぞれで「自分の組織のやり方が一番だ」と主張されるケースが多く、トップダウンによる標準化がなかなか進みませんでした。

2つ目は、属人化の問題。社員が休職や退職をしたときに業務が回らなくなることが度々発生していました。特に、人による判断が必要、かつ年に数回しか発生しないような業務の標準化が急務でした。

3つ目は、委託先が行う業務のブラックボックス化。委託先と当初からやり取りをしていた担当者が転勤などでいなくなってしまうと、途端に業務内容が分からなくなり、自社で全容が把握できなくなるといった問題を抱えていました。

他にも、RPA活用による費用対効果が見込めないなどの課題もあり、同社は「BPMS×RPA×AI」のアプローチを採用。BPMシステムを使って理想の業務フローを描くことで、RPAやAIのさらなる活用分野の拡大を可能にしました。

また、ローカライズや属人化、ブラックボックス化の問題について、BPMNを用いることで組織ごとにおける業務フローの表記統一が可能に。今まで行っていた自社独自の業務フロー作成で問題となっていた、組織階層や粒度のバラツキをなくすことに成功したのです。結果として、最初に抱えていた業務課題の解決につながりました。

さらに同社は、現場の社員がBPMNを作成し、それに基づいて自らシステムや点検ルールのあり方を見直す、現場主導の仕組みづくりを実施しています。

参考:ビジネス+IT:日本生命のRPA活用術、AIやBPMNでどう効果を最大化させようとしたのか

東京海上インドネシア:業務プロセスを可視化し、サービス品質とスピードを改善

東京海上インドネシアは、インドネシアの顧客へ損害保険商品を展開する、東京海上グループの会社です。

同社の業務は、主に業務ごとに個別最適化されたシステムと、社員の手作業によって行われていました。しかしそれでは、システム間の連携が取れないほか、属人化が発生していたりデータ集計が難しくなっていたりする問題が発生していたのです。加えて、同国の経済成長に伴う人件費の高騰や人材の流動化により、より一層の業務効率化や標準化が求められていました。

そこで、BPMシステムの導入を決意。システム上でAs -IsモデルとTo-Beモデルを作成し、業務プロセスの改善に向けて再設計を行いました。

結果、業務をまたいだプロセスの可視化や自動化、データ連携に成功します。それが権限の見直しやオペレーションミスの低減につながり、サービスの品質・スピードの両方が向上していったのです。同社は今後、BPMシステムをBIツールと連携させ、さらなる業務効率化を目指していいます。

参考:intra-mart:東京海上インドネシア様の導入事例|NTTデータイントラマート

基礎を踏まえたBPMの実践を

この記事では、BPMの概要や取り組み内容、成功事例などを中心に解説いたしました。BPMは、「業務の標準化を進めたい」「RPAの活用範囲をさらに広げたい」と考える方にとって、非常に有効な管理手法です。

自社でBPMプロジェクトの立ち上げを検討する際は、あわせてBPMNやBPMシステムの活用を検討しましょう。ぜひこの記事を参考に、BPMの実施を検討してみてください。

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