近年、DXによるIT化の促進によって、さまざまな組織や企業で業務プロセスの可視化や見直しが進められています。業務やビジネスプロセスの改善や管理を目的にBPMツールの導入を検討しているという方もいるでしょう。
しかし、BPMツールの機能やメリットを理解せずに導入を進めてしまい、失敗してしまうという事例も少なくありません。そこでこの記事では、BPMツールの基礎知識から機能、BPMツールの比較まで幅広くBPMの情報をまとめていきます。
BPMツールとは?
BPM(Business Process Management:ビジネスプロセス管理)とは、製造・調達・営業など、各分野における業務プロセスの効率化を目指すシステムです。</div#menu>
プロセスの全行程を整理して改善点を洗い出し、課題内容を反映した新しい業務プロセスを設計できます。設計したプロセスの結果予測や運用後のモニタリングを行う機能を活用しながら、自社に合った業務プロセスを確立するのがBPMツールの目的です。
また、「課題抽出→データ分析→プロセスの再構築→運用」を継続的に行い、自社に合った最適な業務フローを確立します。
BPMツールとワークフローシステムの違い
BPMツールと似た言葉であるワークフローシステムの違いを解説していきます。
BPMツールは販売・製造・出荷などの業務効率化を図るシステムです。業務全体のプロセスを可視化し、課題発見や改善を目指すことができます。一方で、ワークフローは経費精算・提案書・有給休暇申請など、各申請業務の承認・稟議の効率化を図るシステムです。
上司や複数部署の承認が必要な業務のスピードアップを図り、残業時間削減や顧客満足度向上を目指します。このように、どちらも業務効率化を図れるシステムですが、業務の対象や導入効果は異なります。
どちらが自社に合っているかを判断してから、検討を進めることがおすすめの方法です。
BPMツールの機能
BPMツールの主な機能は以下の4点です。
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それぞれの機能を理解して、自社の状況にBPMツールが必要かどうかを判断していきましょう。
業務フロー作成
新たな業務フロー作成によって、品質向上と業務効率改善の両立を実現できます。BPMツールの導入によって無駄な工程の削減や業務内容の簡素化など、全体の流れが理解しやすい業務フローを作成できるからです。
業務の流れを具体的にイメージできるフローチャートの作成によって、他部署から異動してきた社員や新入社員の不安を軽減します。
シミュレーション機能
新たに設計したビジネスプロセスがどのような役割を果たし、どのような結果を生み出すか予測する機能です。
業務効率改善・ミスの削減・品質向上など、あらかじめ設定した目標の達成を検証できるほか、達成するためには何が必要かを認識できます。
プロセスの検証と課題改善を繰り返し、自社に合った最適な業務フローを作成できるでしょう。
業務プロセス管理
実際に運用している業務プロセスを管理する機能です。
シミュレーション機能で検証した通りの結果が得られているかを確認します。業務プロセス管理で得られた結果に基づいて業務フローの再設計を行い、シミュレーション機能で改善案の有効性を検証できるでしょう。
コミュニケーション機能
作成した業務フローの内容について、担当者間で意見交換や情報共有を行う機能です。
幅広い視点で業務フローを評価し、一人では気付かなかった改善点を発見できます。
また、ツールによってはコメント内容の保存・内容の仕分け・優先順位の振り分け機能を搭載しているため、優先的に取り組まなければならない内容を明確化できます。
BPMツールの導入メリット
BPMツール導入で得られるメリットは以下の3点です。
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他部署の業務内容やプロセスへの理解度が社内全体で高まると、業務効率改善やコミュニケーション活性化を期待できます。それぞれ詳しくみていきましょう。
業務効率改善
ツールの導入によって無駄な工程を削減できるため、BPMツール導入前よりも社員一人ひとりの生産性向上を期待できます。
担当の業務内容や次に取るべき行動が整理されているため、行動に迷いが無くなるからです。業務中の集中力を高める効果もあるため、ミスの削減や成果物の品質向上が期待できます。
業務の進捗状況可視化
他部署業務への理解向上によって、複数部署が関わる業務での連携が改善されます。
なぜなら、社員間のコミュニケーション活性化が望めるからです。
例えば、自社工場でサプリメントを作っていたとしましょう。生産管理・出荷・経理に携わる社員が互いの業務の進捗状況に関して情報を共有し、製品が完成するタイミングに合わせて出荷作業や納品書を発行できます。慌てて作業する頻度が減り、製品の破損や納品書の添付漏れのリスクを最小限に抑えることが可能です。また、スムーズな連携の確立によって社員同士の信頼感も増し、協力体制を築きやすくなります。
新事業立ち上げに伴いプロセスを変更・追加した場合も問題ありません。市場ニーズの変化にも柔軟に対応できる組織を形成でき、安定した企業運営が望めます。
ノウハウの伝承
業務プロセスの可視化によって、業務の属人化を防げます。部署異動・転職・退職によって社員の入れ替わりが発生しても、対応可能な業務体制を構築できるからです。
業務フローの確立によって特定の社員への依存度を下げられるほか、業務のノウハウ・知識を伝承しやすい環境を整えられます。
また、業務の引継ぎに伴う伝達ミスや対応漏れを防ぎ、顧客とのトラブルに発展するリスクを最小限に抑えることが可能です。
BPMツールの選び方
自社に合ったBPMツールを選ぶポイントは以下の4点です。
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それぞれのポイントを理解することで、今後BPMツールを選定する際の参考になるでしょう。
業務プロセス変更の柔軟性
業務プロセスの改善頻度・範囲を問わず、リアルタイムで柔軟に変更内容を反映できるBPMツールを選ぶことがポイントです。なぜなら、BPMツールを導入する理由は業務プロセス改善を迅速に実行することだからです。
柔軟性の低いBPMツールを導入した場合、改善点をすぐに反映できず、高い投資に合った効果は得られません。
既存システムとスムーズな連携が望めるBPMツールを導入し、自社の抱える課題発見につなげていきましょう。
操作性
社員のITリテラシーに左右されないUI(ユーザーインターフェース)に優れたツールの選択が重要です。導入したBPMシステムが使いにくい場合、継続的な使用が見込めないからです。利用頻度が低いと社内全体に業務効率化を高める意識も浸透せず、ミスの増加や業務の属人化に悩まされます。
業務プロセス改善は単発ではなく、長期的な取り組みが重要です。豊富なテンプレート・シンプルなデザイン・プログラミング知識不要で利用できるツールなど、操作性に優れたBPMツールを導入しましょう。
機能性
プロセスの可視化・分析・管理など基本的な機能に加え、自社が求めている機能を搭載しているかどうかも重要なポイントです。
例えば、セルフラーニング機能やオンライン添削が搭載している場合、社員のスキルアップが期待できます。複数の社員が業務プロセスの設計・改善に携わることができ、ノウハウを伝承しやすくなります。
また、内部統制文書機能を搭載しているシステムを選ぶと、業務フローに加えた修正点を業務記述書やRCMに自動反映し、運用負担を大幅に削減することが可能です。
価格
BPMツールの導入にどの程度予算を割けるかで、システムの選び方も変わってきます。
低コストで済ませたい場合は、業務フロー作成・業務プロセス管理・シミュレーションなど、基本機能に絞ったツールや料金プランの選択がおすすめです。
また、クラウド型を選択すると、初期費用やランニングコストを抑えられます。アップデートやメンテナンス作業はベンダーに一任できるため、運用負担はほとんど発生しません。
一方、資金が豊富な場合は操作性・機能性・セキュリティレベルなど、さまざまな点で自社にとって使いやすいBPMツールを最大限追求できます。
BPMツールの比較
BPMツールの導入を検討している方へ、5社のBPMツールを紹介します。5社のBPMツールを比較した表は以下の通りです。
項目 | iGrafx | Ranabase | Questetra | DataSpider BPM | octpath |
特徴 | ・大手企業が多数導入 ・図形テンプレートが豊富 | ・低コスト ・優れたUI | ・アプリで内容を定義 ・リーズナブルな価格設定 | ・優れたデータ収集、 分析機能・初期費用費用が高額 | ・バックオフィス業務に特化 ・低コストで運用可能 |
初期費用 | 要問い合わせ | × | × | 〇 | × |
無料トライアル | × | 〇 | 〇 | × | 〇 |
運用形態 | オンプレミス | クラウド | クラウド | オンプレミス | クラウド |
ホームページURL | https://igrafx.info /function/bpr/ | https://lp.ranabase .com/price.html | https://questetra .com/ja/pricing/ | https://www.hulft.com /software/bpm/product | https://octpath.com/ |
それぞれ詳しくみていきましょう。
iGrafx
iGrafxは、三菱重工・川崎重工・世界銀行グループなど、大手企業が多数導入しているBPMツールです。
特徴は初心者にも使いやすい優れた操作性で、業務内容を書き込んだ図形をつなげていくだけで、業務のフローチャートを作成できます。
3,900種類以上の図形テンプレートを用意しているほか、オリジナル図形も作成できる機能を搭載しており、自由に業務フローを表現可能です。接続線の引き直し・図形の幅・部門の大きさは自動調整されるため、煩雑な修正作業に悩まされる心配はいりません。
さらに、ミスが発生しやすい業務や工程が複雑な業務をチャート上に表示し、社員全体に注意を促すことが可能です。完成した業務フローは高度なシミュレーション機能によって評価し、理想と現状のギャップや改善案を提示できます。
Ranabase
Ranabaseは、コストパフォーマンスに優れたBPMツールです。
表記規則はすでに用意されており、ドラッグ&ドロップで業務フローチャートを作成可能です。
完成したチャートにコメントや付箋を貼れるため、評価・改善点の洗い出し・修正作業へスムーズに移行できます。
また、セルフラーニング機能とオンライン添削によって、フローチャート作成のスキルを高めることが可能です。
無料プラン・無料トライアル機能も用意されており、初めてBPMツールを利用する方もコストを掛けずに機能性を確認できます。
Questetra
Questetraは、クラウド型で操作性とコストパフォーマンスに優れている点が特徴のBPMツールです。
各社員が担当する業務内容はアプリで定義し、内容はドラッグ&ドロップで作成できるため、プログラミングの知識は必要ありません。
また、手作業と自動工程を分けて定義づけできるため、現場の声が強く反映された業務プロセスを作成できます。
料金プランは最も高いProfessionalプランでも月額4,224円(税込)で利用できるため、予算が限られている企業も導入しやすいBPMツールです。
DataSpider BPM
DataSpider BPMは、HULFT社が提供するデータ収集・分析機能に優れたBPMツールです。モニタリング機能によって業務プロセスの運用状況を監視し、「特定の仕事を完結するために、どの程度時間がかかっているか」を算出します。
人員不足・社員の配置ミス・無駄な工程の発生など、業務上で発生している課題の発見へつなげられます。ただし、オンプレミスで運用するため、基本パッケージ+ライセンス代+サポート代を購入する必要があります。
初期費用として300万円以上掛かるため、資金に余裕のある企業向けのBPMツールです。
octpath
octpathは、バックオフィス業務に特化したクラウド型BPMツールです。
社員の入退社手続き・備品発注・システム運用など、多岐に渡る業務のフローチャートを作成できる点がメリットです。
また、オウンドメディアやSNSを運用している場合、記事投稿・アカウント管理・業務の受け渡し方法などをフロー化し、不特定多数の方へ効率的に情報を発信できます。
料金は1ユーザー1,650円(税込)から利用でき、無駄な費用の発生を最小限に抑えられます。初期費用は掛かりません。無料トライアルも利用できるため、コストを掛けずに機能性を確認できます。
まとめ
この記事では、以下の4点に関して解説してきました。
- BPMツールの機能
- 導入メリット
- BPMツールの選び方
- 具体的なツールの紹介
BPMツールは業務プロセスを可視化し、ミスの削減と業務効率改善を図るツールです。
社員に他部署の業務に関しての理解を促し、部門間の連携改善や協力体制の構築実現を目指します。
自社に合ったBPMツールを選択するためには、業務プロセス変更の柔軟性・操作性・価格がポイントになります。
この記事で紹介したツールを参考に選定作業を進めてみてください。
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